ある家庭の食事中のできごとです。
「実は担任の先生が小学生の時に教えてもらったのが今の校長先生で、その校長先生がとっても怖い先生で、担任の先生は学級委員をしていたから、しょっちゅう職員室に呼び出されていてね・・・」
と小学3年生の娘さんが話していると
突然、お母さんが
「食べ物を口に入れたまましゃべらない!お行儀悪い、何回言ったら分かるのよ!」
と注意しました。
それまで饒舌だった、娘さんはムスッとして、黙ってしまいました。
続きが気になる小学1年の弟は「で、どうなったの?」ときいてきます。
しかし娘さんは「もういい」といって視線を落としてご飯を黙々と食べます。
お父さんも黙ったまま。
お母さんはちょっとイラついている感じがあります。
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和やかだった食卓に緊張がもたらされた瞬間です。
この緊張感をもたらしたのはお母さんの怒りです。
ご飯を口に入れたまま食事をするのは確かに、行儀が悪い。
彼女が大人になっても同じことをしていると恥をかいてしまいます。
お母さんが注意するのも無理ありません。
問題なのはその言い方、語気の強さやトーンです。
お母さんの不愉快さ、何言っても伝わらない歯がゆさ、注意しない父親へのいら立ち・・・いろんな思いがあります。それらが強い言葉となったわけです。
ところが、一度できてしまった緊張感はなかなか拭い去ることができません。そしてこの緊張感がもたらすのは
思考の停止
相手への忖度―顔色おうかがう、気に入られようとするまたは、反発
コミュニケーションの面倒くささ―時に断絶さえもたらしてしまう
相手への嫌悪
良いものはもたらさないのです。
確かに相手のためを思っての注意ですが、効果としてはその場の雰囲気を凍らせることと、
その瞬間は注意は聴くけどまた繰り返してしまう可能性があります。
家族でよくあるのは注意された娘が「お母さんだって、ご飯食べながらしゃべってるじゃない」とやり返す。
そうすると、お母さんも「そんなことしません」とか「そりゃ『おいしい!』くらいいいますよ」と言い返すだけで謝ることはありません。
誰かの不愉快が緊張感をもたらします。
そしてその緊張感は当事者以外にも伝わります。
緊張感があってよい雰囲気はありません。それは職場も、家庭も同じです。
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むしろ職場の場合だとさらにたちが悪い。
仕事のパフォーマンスが落ちる
パワハラだと言われる
忖度が増えて仕事が本質から逸れる
そして、敵をつくりすぎると「敵の敵は味方」ということで陰口が増える。
良くない循環をつくりだしてしまいます。
怒りからもたらされた緊張感は個人レベルではストレスをうみだします。
それがもとで、心身を病むこともあります。
この緊張感をなくしていくにはコミュニケーションを変えていくしかありません。
組織の中、家族の仲の雰囲気を作っているのは、言葉です。
その言葉を発する、一人ひとりのコミュニケーションの仕方を変えていくことが、雰囲気を変えるのです。